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 「アンゴーラ(アンゴラ)」はいくつかあるカポエィラの流派のなかでも、アフリカ性や伝統と祖先性を継承し、その表現を守る流派です。昔から行われていたカポエィラが、時代の流れとともに大きく変化し始めたとき、1940年代にメストレ パスチーニャによって「カポエィラ・アンゴーラ」として形作られました。以降、アフロブラジル文化を形成するひとつの貴重な文化として途絶えることがないよう、師範から弟子へと口承文化によって教えが受け継がれていきました。

 メストレ パスチーニャの伝えるカポエィラ・アンゴーラの大きな特徴は、音楽や動きだけでなく、その思想・哲学といえます。​カポエィラを人生そのものとして唱え、言葉や文章、絵にして残し、後世に残すことができた人物でした。そこには、過去からの叡智、非暴力性、危険回避、思いやりや愛までもを比喩的に表現できる偉大な教えとして現在まで受け継がれます。

 私たちがメストレ パスチーニャの教えで特に大切にすることは、精神性と祖先性といえるでしょう。口承文化であるカポエィラを学ぶ上で、欠かせないのは教えてもらう人(師範)との時間。その中で、カポエィラの教え、感覚が伝えられていくのです。そして、カポエィラ・アンゴーラに欠かせないその他の要素は、コミュニティー性、相手への尊敬の心です。これらの要素は時間をかけて練習していく中で、自己への理解と成長、変化へと繋がります。私たちの行うホーダ(演舞・儀礼)では、これらの要素を大事にし、参加をするすべての人々が不可欠かつユニークな存在であることを認め合い、喜びをもって表現しています。

 1980年代、ブラジル全土ではすでにカポエィラ・ヘジォナウの影響を主流としてカポエィラが行われるなか、口伝で継承してきた伝統的なカポエィラを守ってきた年老いた師範、カポエィラ使いや知識人たちの価値が一般的に薄れていきました。その中にはメストレ ジョアォン・グランジ、メストレ ジョアォン・ペケーノ、メストレ カンジキーニャ、メストレ ヴァウデマーなどがいました。

そのなかサルバドール出身のメストレ モライスによってグループGCAP(Grupo de Capoeria Angola Pelourinho)がリオデジャネイロで設立され、その数年後にサルバドールに戻ってきて、グループを設立します。カポエィラ全般においてもカポエィラ・アンゴーラの価値観が見直される活動を始めます。そしてその時代に同時並行で起きていたアフリカ性/黒人性意識、アイデンティティの強調性を求める運動がバイーアでもおきます。メストレ パスチーニャの直系の弟子の二人、メストレ ジョアォン・グランジとメストレ ジョアォン・ペケーノのうち、GCAPは当時道場を持たなかったメストレ ジョアォン・グランジを呼び戻し、一緒に活動をするメストレ コブラマンサと共に、古いメストレ達に再び活躍の場と価値を与え、伝承の場を設けました。

 1980年〜1995年あたりがGCAPによるバイーア州サルバドール市のカポエィラ・アンゴーラの黄金時代といえます。そのなかで、初期メンバーとして学び活動をしたのがメストラ ジャンジャ、メストラ パウリーニャ、メストレ ポロッカの当グループ(インジンガ)の師範たちです。後にこの三師範により、メストレパスチーニャの教えを継承するべく1995年にグループ インジンガ(Grupo Nzinga de Capoeira Angola)がサンパウロで設立されます。

 1990年代にはヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国の大都市でカポエィラが伝えられて広まるなか、メストレ コブラマンサを主軸に国際カポエィラ・アンゴーラ連盟と称されるグループ FICA(Fundação Iternacional de Capoeira Angola)が設立され、世界中にカポエィラ・アンゴーラを広める大きな役割を担います。

 

 日本ではおよそ1990年代後半、2000年初頭よりカポエィラ・アンゴーラが練習され始め、指導者やグループが形成され始め、現在に至ります。今日では、数々のグループとその指導者が存在し、活動を続けています。近年ではブラジルを始め、他国からメストレ達が招聘され来日することは珍しくなく、そのほとんどのイベントは個人的もしくはグループの資金によって開催され、普及活動や学びの場が設けられています。​

カポエィラの特徴のなかで際立つのがその音楽性です。

​こちらではカポエィラ・アンゴーラで使用される楽器の紹介をします。

【ビリンバウ:Berimbau】

アフリカ由来の弓状の楽器。木の棒に針金を張って弦にし、くり抜いたひょうたんをつけて共鳴させる。針金を棒で叩くことによってリズムを作りあげる。ブラジルの北東部に多くみられるカポエィラの中心的な楽器。カポエィラと同様、アフリカより奴隷として連れて来られた人々が伝えた楽器として知られる。弦の張り加減とひょうたんの大きさによって音階を調整し、3本に分けられる。当グループではそれぞれの種類をグンガ、メジオ、ヴィオラと呼ぶ。

いつからカポエィラの中で使われ始めたのかは不確かであり、19世期終わり〜20世紀初頭にカポエィラに持ち込まれたとされる。ビリンバウという名前の語源はアフリカのバントゥ諸国語の言語キコンゴ・キブンドゥと言われる。

【パンデイロ:Pandeiro】

輪っかの形を木で作り、皮が張られる。皮を叩くことで、低音や高音を使い分けリズムを作る。

リムにはジルと呼ばれる円形の金具がついていて、カチャカチャという音を出す。サンバでもよく使われる、タンバリンに似た楽器。

【アゴゴ:Agogô】

高音が特徴の、カウベルのような鉄製の楽器。二つの鉄製の部分を交互に叩くことでリズムキープをする。アフロブラジル宗教カンドンブレにも使われる。

【ヘコヘコ:Rêco-rêco】

ギロのような楽器で、切れ目の入った竹を、小さな棒でギコギコと擦ることでリズムを作る。

【アタバキ:Atabaque】

背が高く、長細い木製の太鼓。コンゴに似た太鼓。牛の皮を使うことが多い。アゴゴ同様、カンドンブレの祭事の中心に使われるとても神聖な太鼓。形と大きさによって音階が変わり、低音から高音までを出すことができる。カンドンブレでは三台同時に演奏することにより、豊富なリズムを作り上げ、神々との交信に使われる。

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